無線LANのSSIDの探索方法(ビーコンとプローブ)

無線LANでは、端末とアクセスポイントは同じSSIDのものどうしで通信を行います。同じSSIDを持つ相手を探す手段にビーコンとプローブがあります。

ビーコンはアクセスポイントが自身のSSIDをブロードキャストします。プローブは端末が自身のSSIDをブロードキャストして、アクセスポイントが応答を返します。

ビーコンのイメージです。

SSIDを探索するこの方法はパッシブスキャンと呼ばれています。

無線LANでは電波が思わぬところにも届いてしまうためセキュリティ上の都合でSSIDを隠したい場合があります。そういうときはアクセスポイントでビーコンを止めることができます。これはSSIDのステルス化と呼ばれています。

ビーコンを止めてしまうと端末はアクセスポイントのSSIDを知ることができないため、プローブを使ってアクセスポイントとSSIDをやりとりします。プローブにはプローブリクエストとプローブレスポンスがあります。アクセスポイントは自身のSSIDと同じプローブリクエストを受信したらプローブレスポンスを返します。

プローブのイメージです。

プローブを使ったこの方法はアクティブスキャンと呼ばれています。

同じエリアにアクセスポイントが複数あった場合は、端末は最も強い信号のアクセスポイントと通信を行います。信号が途絶えたり弱くなってくると、再スキャン(SSIDの異なるいくつかのプローブリクエストを出す)をして別のアクセスポイントに切り替えます。

先ほどSSIDのステルス化でSSIDを隠すことができると書いたのですが、プローブリクエストにはSSIDが含まれています。ですので同じエリアにプローブリクエストを出す端末がいると、その端末が出すプローブリクエストを盗聴することでアクセスポイントのSSIDを知ることができます。ですので、SSIDのステルス化で大丈夫というわけではありません。

無線LANの高速化技術の振り返り

無線LANの高速化技術を振り返ってみました。無線LANで通信速度を高速化させる要素はおおまかに言うと、以下になります。

  • 変調方式の符号化効率
  • 最大ストリーム数
  • 最大帯域幅

それぞれの意味ですが専門的なことはよくわからないので、車に荷物(通信パケット)を積んだイメージで書いてみます。

変調方式の符号化効率ですが、これは1台の車に積める荷物の量になります。一度にたくさん荷物を積めたほうが効率が良いですし、高速化の要素となります。最大ストリーム数は、車が通る道の数になります。たくさん道があったほうが渋滞はおきませんので高速で荷物を運べます。最大帯域幅は、車が通る道の幅です。道幅が広いほうがすいすい進みますので、早く荷物を届けられます。

これを踏まえて無線LAN規格がどのように高速化してきたかを表にしてみると、以下のようになります。

表には書いていませんが、無線LANの最初の規格はIEEE802.11で最大伝送速度は2Mbpsでした。それが802.11bで11Mbpsになりました。802.11aおよび802.11gではOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)という技術を取り入れ、最大伝送速度を54Mbpsまで向上しました。OFDMは802.11ac(wifi5)まで使われています。

802.11n(wifi4)になると最大伝送速度が600Mbpsまで向上しました。11nではチャネルボンディングとMIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)という技術を取り入れたことが大きいです。

チャネルボンディングは、1チャネルが20MHzの帯域幅をまとめて使えるようにする技術です。11gでは1つのチャネルでしたが、11nでは2つのチャネルをまとめて40MHzで使えるようにしました。MIMOは、複数のアンテナで同時にデータを送受信することで一度にたくさんのデータを送ることを可能にしました。昔の無線LANのアクセスポイントはアンテナが1つでしたが、今はアンテナがたくさんあるものが多いです。

802.11ac(wifi5)ではチャネルボンディング、変調方式、最大ストリーム数を11nのときからアップさせることで理論上の最大速度を6.9Gbpsにしています。

なお、11acではMU-MIMO(Multi User MIMO)という技術も取り入れられています。MU-MIMOとは、複数の端末で複数のアンテナを同時に使って通信速度を早める技術です。MIMOでは1台の端末がアクセスポイントの複数のアンテナを同時に使って通信速度を早めていましたが、複数のアンテナをフルに使えないときがあります。スマホなどは端末の内部にアンテナを2本しか組み込めないためアクセスポイントの残りのアンテナが余ってしまうのです。MU-MIMOであれば余ったアンテナを他の端末が使うことができ効率よく通信ができます。

802.11ax(wifi6)ではOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)という技術を取り入れています。OFDMでは1つのチャネルを1台の端末が占有していたのですが、OFDMAでは1つのチャネルをRU(Resource Unit)という単位で分割して複数の端末に割り当てるようにしました。これにより1つのチャネル幅を無駄なく使えるようになり理論上の最大速度は9.6Gbpsになりました。

また、11axでは11acのときと同じくMU-MIMOを使っているのですが、MU-MIMOにも変更が加わっています。11acのときのMU-MIMOでは端末は4台まででしたが11axでは最大8台まで可能となりました。また11acのときのMU-MIMOはダウンロードのみでしたが、11axではアップロードでも使えるようになっています。

最後に802.11be(wifi7)ですが、2022年5月時点で規格策定中です。11beは実測30Gbpsのスループットを目指し、2024年5月の標準化完了を目指しているようです。技術としては、MLD(Multi Link Device)という機器に搭載された複数の無線インターフェイスを連携させて、伝送路を複数確立することで高速通信を実現させるマルチリンク機能が使われるようです。